SSブログ
学校広報の理論 ブログトップ
- | 次の10件

06 学校広報の副次的効果 [学校広報の理論]

学校広報をきめ細やかに行えば、学校側組織内部にもメリットが生じます。

後で述べる広報段階のステージⅡ(日常的広報)以上に限ったことですが、CMSやブログを利用して、日々の活動の詳細記録を蓄積することで、次のような副次的効果が生じます。

  1. 自ら振り返るための記録資料
    日々の教育活動記録がそれぞれの授業レベルに踏み込んで詳細に行われていれば、単なる日記以上の意味を持つようになるでしょう。校務と広報がシステムとして融合すれば、業務記録と広報記事を連動させることも可能です。
  2. エビデンスとしての記録資料
    アカウンタビリティ(説明責任)を示すため、あるいは、学校評価における評価項目に付随するエビデンス(証拠)として、活動詳細記録を再編集したり要約したりできます。ただし、ブログの場合は、日付順のソートや記事検索以上に、強力なフィルタ機能を持っていることが条件となります。

コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学校

05 学校広報が生む価値 [学校広報の理論]

一つ前の記事で述べた学校広報の5つの効果は、学校とステークホルダとの間に社会関係資本(Social Capital)という価値を生み出します。

Robert Putnamら(1992)によれば、社会関係資本(Social Capital)とは、人々の協調行動を活発にすることによって、社会の効率性を高めることのできる、信頼、規範、ネットワークといった社会的仕組みの特徴と定義されます。一般的な資本とは、蓄積が可能で財との交換が可能ですが、社会関係資本の場合はあくまで関係に生じる価値ですから、貯めておくことも、直接お金で買うこともできません。このため、社会関係資本は継続的な維持に努めないと、いつの間にか失われてしまうという性質があります。

ここで、学校の場合を考えてみましょう。
極端な言い方をすれば、社会関係資本としての信頼関係や評判、あるいは協調行動の活性化そのものは、学校が追求する子どもの成長や学力(教育的価値)に対して直接効果をもたらす訳ではありません。そもそも本質的な教育活動が伴わなければ、社会関係資本を活かすことさえままならないでしょう。
しかし、教育活動にさえ注力していれば、社会関係資本など関係ないと言い切れるかといえば、それも否です。どんなに優れた活動を行っていても、周囲がそれを正しく、かつ十分に認識できなければ、社会的な価値はないものとみなされ、理不尽な批判や不当な介入を受けやすくなります。
つまり、学校に於ける日々の教育活動がきちんと遂行され(学校の教育価値)、かつ、それが周囲に十分認識されること(学校の社会関係資本価値)で、学校は正当な評価を受け、教育制度が安定的に維持される(学校の社会的価値)ということになります。

こういった関係を概念的に表すと
[学校の社会的価値] = [学校の教育価値] × [学校の社会関係資本価値] 
と表すことができます。教育価値と社会関係資本価値の両方が揃って相乗効果を生み出すことで、学校の社会的価値はより確固としたものになるでしょう。

[参考文献] 

Putnam, Robert D., Robert Leonardi, Raffaella Nanetti. (1992) Making Democracy Work: Civic Traditions in Modern Italy. Princeton University Press.

哲学する民主主義―伝統と改革の市民的構造 (叢書「世界認識の最前線」)

哲学する民主主義―伝統と改革の市民的構造 (叢書「世界認識の最前線」)

  • 作者: ロバート・D. パットナム
  • 出版社/メーカー: NTT出版
  • 発売日: 2001/03
  • メディア: 単行本


コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学校

04 学校広報の効果 [学校広報の理論]

学校広報による効果は、いずれも学校とステークホルダとの関係を改善・向上させるものです。具体的には次の5つがあります。

  1. 正確な認識の形成
    学校側がどんなに地道な努力や工夫をしていても、社会に正しく認識されなければ、一方的で理不尽な批判を浴びたり、不当な評価をうけやすくなります。学校の現実を正しく伝えることは、学校とステークホルダの関係維持のみならず、この国の教育の仕組みを当事者自ら妥当な方向へ導くために欠かせません。
  2. 基本的信頼関係の構築
    根拠のない思い込みで成り立つ信頼は脆く崩れやすいものですが、正確な認識のもとに構築される信頼関係は、持続的で安定的です。学校の現実がきちんと理解されていれば、何かトラブルがあっても冷静に捉えてもらえますし、解決に手を貸してもらうこともできるでしょう。
  3. 社会的評判や愛着の形成
    正しい認識と基本的信頼関係によって形成される社会的評判や愛着(我が町の学校的感情)は、ステークホルダの実感から生まれるものゆえに説得力があり、根拠のない噂や風評を駆逐します。
  4. 学校運営や行事への参画
    基本的信頼や学校への愛着があれば、学校運営や行事への参加参画をスムーズに促すことができます。学校評価や地域運営学校など、相応の負担と関与を求める場合は、ステークホルダ側の動機付けを高めるうえでも、信頼や愛着は欠かせない要素となるでしょう。
  5. 説得・交渉リスクの軽減
    不信感をもって対決姿勢になっている相手を説得するのは非常に困難です。感情的なもつれを解いて、筋の通った説明を相手に受け入れさせるには、とにかく時間と手間がかかるものです。学校の実情を正しく知り、かつ、学校の教育活動に理解を示す相手なら、ストレートに課題をぶつけて問うても誤解したり、むやみに反発したりといった状況は起きにくいでしょう。

これら5つの効果がどのような価値を生むのか、記事05で説明しましょう。


コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学校

03 ステークホルダとは [学校広報の理論]

ステークホルダ(stakeholder)とは利害関係者を指します。学校広報では、ステークホルダを対象とした活動を行います。

ステークホルダの概念は、もともと企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responcibility)に由来するものですが、もはや企業に限った概念ではなく、行政や公共機関でも同様のとらえ方がなされています。重要なのは、CSRにおけるステークホルダが社会(social)にまで広がっているように、学校もまた社会とのつながりを持つ以上、学校広報のステークホルダ範囲をかなり広くとらえる必要があるということです。

表:学校広報のステークホルダ

顕在的
ステークホルダ
組織主体教育委員会・管理職・教職員
コスト負担自治体・納税者
直接受益者児童生徒・保護者
潜在的
ステークホルダ
外部関係者地域社会・市民
間接関与者保護者以外の家族
転入学希望者・卒業生
一般社会人

表のように、学校広報のステークホルダには、顕在的ステークホルダと潜在的ステークホルダの二種類があります。

顕在的ステークホルダは、学校側が具体的な相手を直接認識可能なケースを指します。一般的な対象として真っ先に考えられるのは「保護者」ですが、それだけではなく、組織内部の管理職や教職員、教育委員会、あるいは、公金支出のアカウンタビリティを果たすための自治体や納税者といった対象もまたステークホルダの範疇に入ります。

潜在的ステークホルダは、学校側が相手を直接認識困難なケースを指します。いわゆる不特定多数と呼ばれる存在です。たとえば、転勤等で転入学を希望する保護者の多くは、学校ウェブサイト等で転居候補地付近の下調べを念入りに行うといいます。また、社会人になっても母校の様子を気にかける人々は意外に多いものです。こういった対象は、不特定多数であるがゆえに、これまでは学校側から直接到達困難だったのですが、学校ウェブサイトを意識して整備すれば、効果的に情報を伝えることができます。

先にも述べたように、学校は社会とつながりを持つ公共機関ですから、目先の保護者のみならず、広く学校に関心を寄せる人々に対して、いかに的確な広報を行うかが求められていると言えます。


コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学校

02 学校広報が扱う情報とは [学校広報の理論]

学校広報で扱う情報は公的組織情報、つまり、児童生徒の個人情報以外のすべてです。

公立私立を問わず、学校機能は一部もしくは全部が公金によって維持されています。公金の使用にはアカウンタビリティ(accountability:説明責任)、すなわち、活動予定・内容・結果等の報告を公(おおやけ)に対して行う義務が生じます。

学校の組織体制・教育目標・シラバス等の情報、また、行事・イベント、授業、校内研究に至るまで業務時間内に行われるものはすべてが広報の対象と考える必要があります。


コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学校

01 広報って宣伝とどう違うの? [学校広報の理論]

宣伝は広報のごく一部分に過ぎません。

日本で広報と宣伝はほとんど同義で使われています。しかし、英単語に直せばそれぞれ広報(public relations)、広告・宣伝(advertisement)となり、意味の違いがはっきりします。Public Relationsのそれぞれの語が示すように、公(おおやけ)との持続的な関係維持が目的とされるのに対して、advertisementの大半はマスメディアを前提としたものですから、一般的な理解としては、むしろ一方向的かつ一時的・拡散的な情報伝達が目指されているといえます。

WikiPediaの解説によれば、パブリック・リレーションズとは「個人ないし国家や企業その他の組織体で、持続的または、長期的な基礎に立って、自身に対して公的な信頼と理解を獲得しようとする活動のこと。」と表されています。一方、学校広報研究のDoyl M. Bortnerの定義では、学校広報とは、「学校と関係対象者との間で十分理解し合い、友好的な協力関係を築くよう努めること」。学校運営に公衆(public)が参画する状況を前提とし、説得や対話を目的とした計画的体系的プロセスと位置づけられています。

一時的一方向的な「宣伝」は人まかせにできますが、持続的な関係構築を目的とした「学校広報」は当事者が行うべきことであり、学校経営においても重要な位置づけを持つと言えます。

[参考文献]

パブリック・リレーションズ―最短距離で目標を達成する「戦略広報」

パブリック・リレーションズ―最短距離で目標を達成する「戦略広報」

  • 作者: 井之上 喬
  • 出版社/メーカー: 日本評論社
  • 発売日: 2006/03
  • メディア: 単行本

Public Relations for Public Schools

Public Relations for Public Schools

  • 作者: Doyle M. Bortner
  • 出版社/メーカー: Schenkman Books
  • 発売日: 1982/06
  • メディア: ペーパーバック


コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学校
- | 次の10件 学校広報の理論 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。